どうも、ふじけんです。
今回は腰の機能解剖についてのお話です。
トレーニングや腰痛において、自分の体を知っていることは怪我に対する予防やトレーニング効果においても有力だと思います。
体の構造について学んでいき、自分の体は自分でマネジメントできるようにしましょう。
今回の内容は以下の通りです。
- 腰の骨『腰椎』について
- 脊椎の関節構造
- 椎間板について
- 腰部脊柱の運動
目次
脊柱全体の解剖
脊柱とは、胸骨、肋骨、骨盤を除く全脊椎骨の組み合わせのことを指します。
つまり背骨です。
よく言われる『体幹』という言葉は、頭部、頸部および四肢を除く、胸骨と肋骨、骨盤部を含めた人の体を表します。
脊柱は、通常、33個の椎骨と呼ばれる骨からなり、5つの部位に区分されます。
頚椎が7個、胸椎が12個、腰椎が5個、仙椎が5個、尾椎が4個あります。
成人では仙椎と尾椎はそれぞれ癒合して仙骨と尾骨を形成します。
個々の椎骨はアルファベットと数字を短縮した形表されます。
病院などでC2、L4とか聞いたことありませんか?
それぞれ頭文字をとっています。
頚椎(cervical)、胸椎(thoracic)、腰椎(lumber)、仙椎(sacral)ですので、
例えば、第2頚椎はC2、第7胸椎はT7、第4腰椎はL4、第1仙椎はS1と表されます。
今回は脊柱の中の腰椎(lumber)について説明していきます。
腰の骨『腰椎』について
腰椎は、大きく幅広い椎体をもち、頭部、体幹、上肢をあわせた重量を支持するのに適しています。
腰椎は5個あり、総重量は頚椎7個の約2倍と言われています。
腰椎のほとんどの部位は、似た特徴をもちます。
椎弓板と椎弓根は短く、厚いです。
棘突起は幅広い長方形で、左右の椎弓板の接合部から水平に突き出します。
胸椎とは著しく形状が異なります。
短い乳様突起は、各上関節突起の後面から突き出します。
この構造により、多裂筋は付着しやすくなると考えられています。
腰椎の椎間関節面は、ほぼ垂直を向きます。
上関節面はやや凹で、内側ないし後内側方向に向きます。
上位腰部の上関節面はほぼ矢状面(正面)を向きます。
中間から下位腰部の上関節面は矢状面と前額面のほぼ中間(斜め45°)を向く傾向にあります。
下関節面は、対応する上関節面に対して形状と向きが適合することになります。
L5の下関節面は、仙椎の上関節面と関節を形成することになります。
そのため、L5-S1の椎間関節は他の腰椎の椎間関節に比べて、より前額面(外側)を向きます。
L5-S1の椎間関節は、腰仙関節の前後の安定性を得るために重要になると考えられています。
関節面の形状などは運動を考える上でとても大切です。特徴をしっかり掴みましょう。
脊椎の関節構造
典型的な脊柱の関節結合は、
- 横突起と棘突起
- 椎間関節
- 椎体間関節
の3つの機能構成要素を有します。
横突起と棘突起
横突起と棘突起は張り出し材、つまりテコとして機能し、筋や靭帯の力学的作用を高めると考えられています。
椎間関節
椎間関節は、列車の方向を案内する線路のように、椎間の動きを制御します。
各椎間関節の形態や大きさ、空間的方向づけにより、椎間の動きの方向性は大きく影響されると考えられます。
上関節突起と下関節突起により構成される椎間関節ですが、骨突起の言葉は「伸び出たもの」を意味し、関節突起の突き出る性質を強調しています。
関節突起は機械的なバリケードとして働きます。
下胸部、腰部、腰仙部はの椎間関節はほぼ垂直に向いているため、ある椎骨がほかの椎骨よりも過剰に並進するのを防いでいます。
機能的にこの特性はかなり重要です。
過剰な並進運動があると、脊髄や脊髄神経根に過剰なストレスが加わる恐れがあります。
各関節の関節面の向きは、脊柱各部の運動に影響を強く及ぼします。
水平な向きの関節面は体軸回旋に都合が良いが、矢状面あるいは前額面にある垂直な向きの関節は体軸回旋を阻害することが考えられます。
これらの関節面方向により、各関節がどの運動に優れているか理解できると思います。
椎体間関節
椎体間関節は、椎間板を一体のの椎体と結合させます。
この関節の主な機能は、衝撃吸収と負荷分散になります。
脊柱が屈曲すると、荷重の大部分が椎体間関節の前方にかかります。
加えて椎体間関節は、脊椎間の最も大きな接着源であり、おおよその回転軸となります。
ここで重要になるのが椎間板になります。
椎間板は椎体運動時の椎間スペーサーとして、脊柱全高の約25%の高さを持ちます。
この椎間板が適切な高さを保てないと、椎間体関節は機能的な運動が難しくなることが考えられます。
例えば、椎体間腔が大きくなるほど、1つの椎体を、他の椎体の上で前後に「揺らす」能力が高まることが考えられます。
逆に椎体間腔がないと、連続する2つの椎体間がほぼ平坦な骨境界面となり、矢状面や前額面の回旋ができなくなり、過大に傾けることや並進しかできなくなることが考えられます。
さらに、椎間板が作り出す空間が出て行く神経根の適切な通路となります。
椎間板って大切ですね。
椎間関節と椎体間関節が関係する障害が、外傷や累積ストレス、加齢、疾病、あるいはこれらの複合したもので生じると可能性が考えられます。
椎間板について
前述した椎体間関節の内容で椎間板の重要性は理解できたと思います。
腰椎椎間板の構造に関する考察が挙げられていたので、椎間板について触れつつ紹介したいと思います。
椎間板の構造と機能に関する知見の大部分は腰部で行われた研究結果に基づいています。
この結果は腰部では、椎間板の変性、とりわけ、下部腰椎での椎間板変性が極めて多いことを反映していると言えます。
腰椎椎間板は、中央の髄核を線維輪が取り囲んだ構造をしています。
髄核は、椎間板の中央〜後方に位置する柔らかなゲル状の物質です。
髄核は70〜90%の水分を含んでいるといわれています。(若年者において)
髄核が水分を含んで存在していることで、椎間板はある種の水圧を用いた衝撃吸収装置として機能し、連続する椎骨間の過重負荷を分散・伝達させることができるようになっています。
通常、圧迫力は、包み込まれた含水性髄核の静水圧を増加させます。
この静水圧の増加と閉じ込めによって、最終的には、負荷を鳩首し、椎間結合全体にわたって負荷を均一に分散させます。
水分を十分に含み、圧力がかけられた椎間板は、椎体間関節を保護するだけでなく、関節的に椎間関節も保護します。
水分含有量が少なく、薄くなった椎間板は、椎間関節に大きな圧縮力を加えることになります。
椎間板に圧迫力がかかる姿勢(長時間の座位や立位)は、椎間関節の関節炎を招くかもしれませんね。
朝は身長が高い?椎間板内の含水量の日内変動
朝イチは身長が高いという、あたかも都市伝説のような話聞いたことはありませんか?
これは事実です。
この現象が椎間板と関係しており、この情報がある意味トレーニングと怪我のリスクとも関与していると私は考えます。
ベッドに横たわるなど、健常な脊髄に負荷がかかっていない時には、髄核内圧は比較的低いことが考えられます。
この圧力が比較的低いことが、髄核が親水性であることと合わさって、椎間板に水を引き込み、その結果、睡眠中には、椎間板がわずかに膨潤します。
しかし、起床し、直立姿勢をとるようになると重力が直接椎間板に圧を加えることになるので、椎間板に圧縮応力が生じ水が押し出されます。
これが朝身長が少し高くなる理由です。
全体の身長は、平均すると1%の日内変動を示すといわれています。
日内変動量は、年齢とも強い相関関係があるといわれています。
Karakidaらによると、特に含水量の大きな日内変動は、35歳未満の椎間板にのみ認められたと報告されています。
これらの知見は、椎間板の保水能力が、加齢とともに低下するという事実と合致しています。
これをトレーニングの怪我と考えてみましょう。
朝身長が高い理由が椎間板の含水量によるものだと考えると、通常以上に椎間板は高位を示し、ある意味椎体間関節は不安定なことが考えられます。
特に腰椎を屈曲しやすい人は、高位な椎間板に対して圧縮ストレスを過度にかけやすく、椎間板ヘルニアなどのリスクが高くなります。
椎間板ヘルニアを経験する確率は、午前中に多い傾向が報告されています。
トレーニングで該当するとすれば、特に朝トレをする人!
朝からデッドリフトや腹筋運動など、椎間板に過度な圧縮ストレスをかけている人は注意が必要かもしません。
腰部脊柱の運動
構造上に関して腰部L1-4とL5-S1では異なります。
腰部L1-4
多くの腰部椎間関節の関節面はほぼ垂直方向を向き、矢状面に対しては中等度もしくは強度の傾斜を示します。
例えば、L2の上関節面の向きは、平均すると矢状面に対して約25°です。
この関節面の方向性は、矢状面での運動には適していますが、水平面での回旋運動には不利なこが考えられます。
L5-S1連結部
ほかの定型的な椎間結合と同様に、L5-S1の連結部には、前方に椎体間関節、後方に一対の椎間関節があります。
L5-S1の椎間関節の関節面は、通常、腰部のほかの関節に比べてより前額面に近いです。
仙骨自然位で前下方に約40°傾斜しています。
この傾斜によりL5-S1間に前方滑りの剪断力が生じることが考えられます。
そして腰椎の前弯が増大すると、仙骨水平角度が大きくなり、結果的にL5-S1間の前方剪断力は大きくなります。
このことから、スクワットなどで腰椎が過度に前弯してしまうことが、大変危険なことは理解できるかと思います。
この剪断力に対して、いくつかの構造が抵抗しています。
それが前縦靭帯と腸腰靭帯になります。
前述の結合組織に加え、L5-S1の連結部では、L5-S1椎間関節の広い強靭な関節窩によって強固な骨性の安定性が得られると考えられています。
この関節面が前額面に近い角度で傾斜していることは、この部位に発生する前方剪断力に抵抗するのに理想的であると言えます。
しかし、この抵抗力が返ってL5-S1椎間関節内に圧迫力を生じさせるとも考えられます。
この関節が十分な安定性がないと、腰部下部が仙骨に対して前方にずれる可能性が考えられます。
この異常によりおこる問題が、脊椎前方すべり症として知られています。
腰部の運動
健常成人が直立姿勢をとると、腰椎は、通常約40〜50°の前弯を示すといわれています。
しかし、個人差が大きいのに注意が必要です。
この中立位から腰椎は自由度3で動くことができます。
- 屈曲:40〜50°、伸展:15〜20° 計55〜70°
- 体軸回旋:5〜7°
- 側屈:20°
屈曲と伸展
約40〜50°の屈曲と15〜20°の伸展が腰椎に生じるといわれています。
5つの椎間接合のみで生じる運動と考えると、合計55〜70°というのは大きいと思われます。
これは前述してきた腰部椎間関節面の傾斜が矢状面を向いていことによるものと考えられます。
日常生活の重要でよく行う活動の多くは、腰部を含む身体の屈曲や伸展が関わってきます。
例えば、前屈して地面に手を接すること、急な階段を登ること、自転車を降りることなどです。
これらの活動は全て、体幹、腰椎、あるいは股関節の運動学的関連性が関係します。
この運動学的相互作用はとても重要であり、腰痛に深く関係します。
腰部の屈曲運動に関してですが、最大屈曲位では、椎間関節面の接触面積が大きく減少することが予測できます。
おもしろいことに、腰椎が完全屈曲すると、椎間関節にかかる力は減少しますが、関節面の接触面積は狭くなるため、そこにかかる(単位面積あたりの)圧力が実際には高くなる場合があります。
これは負荷を分散して受ける表面積が低下するためと考えられています。
極めて高い圧力は、屈曲している椎間関節に損傷を与える場合があります。
とりわけ、そのような高い圧力が長時間持続する場合や、関節表面の形状が異常な場合にその可能性が高くなります。
体軸回旋
腰部の水平面での体軸回旋域は、左右わずか5〜7°ずつです。
臨床での測定値は、しばしばこの値を超えるといわれています。
これは、股関節と下位胸部領域に、腰部の回旋以外の運動があるためであると考えられています。
椎間関節の関節面の向きがきわめて矢状面に近いため、体軸回旋が物理的に阻止されることが予測されます。
回旋側の対側にある椎間関節が圧迫され、そのため、それ以上の運動がブロックされます。
理論的には腰部のどの椎間結合においても、3°の体軸回旋が生じると、関節面に損傷を与えることが考えられます。
ほとんどの正常な生理的運動では、この損傷を与える可能性の限界よりも十分安全な範囲にとどまっていると考えるべきです。
側屈
腰部の側屈は、左右約20°である。
椎間関節の向きと構造に差はありますが、腰部の側屈時に見られる関節運動のパターンは、胸部の場合と基本的にほぼ同じといわれています。
側屈運動は、側屈側の対側にある靭帯によって制限されます。
髄核は、運動方向からわずかに離れるように変形します。
まとめ
いかがだったでしょうか?
腰椎の構造を理解することで、運動も自ずと理解が深まりリスク管理もできるようになると思います。
腰椎についてまとめると、
- 腰椎の椎間関節面は矢状面に位置している
- 屈曲・伸展運動に長けている(関節面から考えて)
- 回旋運動は腰椎でおこるべきではない
この内容は、今後記事にしていく予定の腰痛や正しいトレーニングフォームなどにおいての基盤になります。
頭で理解し、イメージできるだけで、あなたの悩みの解決度は異なるでしょう。
そして、知れば知るほど面白い。
それが人の身体です。
人体って奥深い。