どうも、ふじけんです。
腰椎分離症ってみなさんご存知ですか?
腰椎の後方部分における疲労骨折のことなんですが、成長期スポーツ選手に多発するといわれています。
今回は腰椎分離症について以下の内容でまとめてみました。
- 病態(症状)
- 受賞機転・予防
- 診断
- 治療
ぜひ参考にしていただけると幸いです。
目次
腰椎分離症
腰椎をはじめとする背骨の構造は、主に身体を支える前方の部分(椎体)と脊髄神経を取り囲む後方の部分(椎弓)で成り立っています。
この椎弓と呼ばれている部分に骨折を起こしてしまい、背骨の前方と後方が分離してしまうため、分離症と呼ばれています。
解剖学的には、椎弓の関節突起間部と呼ばれる部分の骨折が圧倒的に多くみられるといわれています。
時に前方部分と後方部分のつなぎ目(椎弓根)が折れる場合もあります。
一般的には成長期スポーツ選手に多発するため、子供の頃の疲労骨折説が有力ですが、未だ解明されていない点も多い疾患です。
病態(症状)
分離症は、疲労骨折としての発生段階から完全に折れてしまった状態まで病期によってさまざまな症状を出します。
主には腰痛になります。
しかし、時に下肢の張りや痛みを訴えることがあります。
その理由は、その病期によって異なります。
発生段階における主訴として多いのはスポーツ中あるいはスポーツ後の腰痛です。
初発時の腰痛は軽微であることも多く、自然経過で軽快しスポーツ以外で日常生活には支障がないことも多いため、医療機関を受診しないことも多いです。
腰痛が繰り返し生じるようになってから初めて受診するため、これが早期診断を拒む原因となります。
この遅れが後の予後を大きく左右することになります。
診断
成長期のスポーツ選手が腰痛を訴えた場合、まず腰椎分離症を疑う必要があります。
徒手検査として、当該椎体レベルの棘突起の圧痛、腰椎後屈と腰椎回旋による痛みの発生(kemp sing)が重要となります。
このように腰を反らすと痛い・ひねると痛いというのが一般的です。
診察ではこれらの痛みの誘発テストを行うとされています。
以前の教科書では、単純X線写真(レントゲン)の所見がよく書かれていました。
分離症がある場合には、X線の斜位像でスコッチテリア犬が、まるで首輪をしているようにみえます。
しかしながら、X線だけでは、早期診断にはどう考えても無理があると思われます。
ある報告では、X線のみの診断では、分離症の進行度によっては骨折を同定できなかったと報告されています。
言い換えれば、X線だけで診断できるときは、かなり進行していると考えるのが良いとされています。
そこで単純X線写真(レントゲン)では分かりづらい骨折線もCTをみるとわかりやすくなります。
CTを利用し、その骨折部の所見によって疲労骨折としての病期を定義されました。
この病期分類は、現在も治療方針を立てたり、予後を推測する上での基本とされています。
病期分類
腰椎関節突起間部の疲労骨折から腰椎分離症に至る過程は、大きく3つに分けられます。
- 分離初期
- 分離進行期
- 分離終末期
前述した通り、これらの身体所見は病期によって異なります。
分離初期
CTによる病期分類として、部分的骨透亮像やhair line様の亀裂が認められるとされています。
酒井らはシンプルな解釈を提唱しており、CTで素人(患者さんのご両親などの一般人)ではわかりにくい亀裂としています。
分離初期の主訴として多いのは、腰部から大腿部にかけての放散痛を伴う腰痛です。
疲労骨折そのものによる痛みと考えられています。
しかし、初発時の腰痛は軽度であることが多く、安静で軽快し、スポーツ中以外の日常動作位では支障がないため、医療機関を受診しないことが多いです。
分離症進行期
CTによる病期分類として、明瞭な亀裂を伴うが、分離部周囲の骨硬化は認めないとされています。
酒井らによると、CTで素人でもわかる骨折線としています。
進行期になると、腰痛が繰り返し生じるようになってようやく受診することが多くなります。
そのため初期での早期発見は決して容易ではないとされています。
分離終末期
CTによる病期分類として、分離部周囲に骨硬化がみられる、いわゆる偽関節像を呈すとされています。
酒井らによると、CTで素人でもわかる骨折線、かつMRI所見が見られないとしています。
終末期になると腰痛は軽減し、特に支障なく日常生活も可能になるといわれています。
しかし、分離部周囲に滑膜炎が起こると腰痛が発生します。
また、骨が未成熟であるほど椎体のすべりが発生し、進行しやすくなるといわれています。
分離滑り症に進行すると、腰痛だけでなく下肢の痛みやしびれなどの神経根症状も併発する可能性があります。
MRI検査
最も感度が良いとされているのがMRI検査になります。
初期の分離症を検出するのに適しています。
最近では、骨折線がはっきりする前に、MRIで椎弓根部に骨髄浮腫用の所見がみられることがわかってきました。
酒井らは、単純X線やCTで骨折線が明らかではないが、MRIで椎弓根周辺に輝度変化を認める時期を、超初期としています。
治療
どのような状態であっても、まずは保存治療が推奨されています。
ただし保存治療を行うとしても、骨癒合を目的とするのか、疼痛コントロールだけを目的とするのかなど、
治療の目的をはっきりさせることが重要となってきます。
“骨癒合を目的とする”保存治療を行う際に、特に重要なのは、保存治療で骨癒合が得られるかどうかを見極めることです。
安静にして待っていても骨癒合が得られる可能性はゼロなのに、何ヶ月もスポーツ中止をさせられていては可哀想だと思います。
局所安静のためと考えると、間違いではありませんが、しっかり目的を持った治療方針が大切となり、
他職種で治療方針について共通認識を持つことが大切になると思います。
保存療法により元の競技レベルに復帰できるが、腰痛や神経根圧迫による臀部・下肢の痛みで日常生活や仕事に支障が生じれば、手術の適応となるとされています。
手術には、神経の圧迫を除去する椎弓切除術や、分離部の骨を癒合させて正常な状態にする分離部修復術などがあります。
さらに二次的な変性や神経障害が進行している場合には、やむなく一つ下の椎体との間を固定する後方椎体間固定術の適応となるといわれています。
予後について
予後は、初診時の所見で大きく変わります。
進行中の疲労骨折として考えると、当然早く診断できれば治る可能性も高いし、進行すればするほど治りにくいです。
そのため早期診断が非常に重要となります。
MRIの所見で予後が決まるといわれており、この所見のうむが骨癒合に関する予後にも影響することがわかってきています。
また分離症の発生した脊椎高位によっても予後が異なるとされています。
ある調査では、分離終末期で、その脊椎高位は最尾側腰椎L5が90%、L4が5.6%、L3が3%という結果でした。
つまり終末期を完成した分離症とすると、その9割以上がL5という結果だったようです。
他の調査で、発育期患者においてのMRIによる早期診断を用いた脊椎高位別調査の結果では、
L5は66.3%で、L4が24.8%、L3が8.9%と、意外にも疲労骨折として“発生段階の分離症”は、L3やL4にも多く発生しているということがわかりました。
またこの研究の母集団による骨癒合率は、頭側ほど骨癒合率が高い(L3>L4>L5)という結果が得られたと報告されています。
これらのことは、L3やL4などでは分離症が発生したとしても、治りやすく、L5は分離症が発生しやすい部位であるだけでなく、治りにくい高位ではないかと考えられます。
骨癒合目的の保存療法
骨癒合を目的とする場合、基本的には、スポーツ活動の中止および硬性装具の装着が推奨されています。
目的としては、腰椎の伸展・回旋運動を制限することになります。
硬性装具を使用することにより、骨癒合率の向上も報告されています。
初期の場合は90%以上、進行期でも60%以上の骨癒合が得られたと報告されています。
進行期の骨癒合率は、MRI検査で椎弓根の高信号を認める場合と認めない場合で異なります。
認める場合は約60%、認めない場合は約30%とされています。
前述した内容も含め、進行期ではMRI検査での所見がカギとなりそうです。
骨癒合を得るための期間としては、初期は3ヶ月、進行期は6ヶ月程度のスポーツ休止とコルセット装着期間を要するといわれています。
リハビリテーション
保存療法は、基本的に患部の局所安静を要します。
そのためには、あらゆるスポーツ活動の休止が望ましいことは、誰しもが理解できると思います。
しかしながら、分離症の患者さんのほとんどは、アスリートであり、長期間の活動休止が身体能力の低下だけでなく、復帰時のモチベーション低下にもつながります。
ましてや成長期の子供に対しての安静は相当なストレスだと思います。
すべてのスポーツ活動の休止という指示をいうのは簡単です。
しかし、実際のスポーツ少年少女を目の前にすると簡単ではありません。
我々は、治療中にどこまでしていいのか? 何をすべきか?を考えなければならないと思います。
しかし、科学的根拠に基づいたリハビリテーションプログラムは、未だ確立されていないのが現実です。
そのためこの内容に関しては別途私の考えとして記事にさせていただきます。(注:科学的根拠はありません。)
まとめ
今回は腰椎分離症についてまとめてみました。
成長期のアスリートに多い疾患であり、よりデリケートな対応が求められるかと思います。
診断は医師が行うものであり、私(理学療法士)はできません。
しかしこのような知識は絶対必要です。
なぜなら医師の診断(意見)・指示を全職種(現場の監督やコーチ、保護者含む)で共有することが一番大切だと思っているからです。
少しでも才能ある子供達を良い方向へ導けるように努力が必要です。