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なぜデッドリフトで腰痛になりやすいの?背部損傷の軽減に焦点し解説!|筋トレ×解剖・運動学

どうも、ふじけんです。

筋トレ好きの方なら一度はしたことがあるデッドリフト

デッドリフトの正しいやり方などについては、熟練者たちが参考になるものをいくつも目にします。

しかし、あのデッドリフトによってダメージを受けているのは筋肉だけではないことを知っておかなければなりません。

いつか怪我に繋がる恐れがあります。

そもそもなぜデッドリフトで腰が痛くなるのか?

なぜデッドリフトは腰に負担がかかるのか?

 

デッドリフトは、全身のいたるところ、特に腰骨盤部に大きな圧迫力、張力、剪断力を生ずると言われています。

デッドリフトはいわゆる持ち上げ操作のわけですが、腰痛の危険因子でも関連性が高いと言われています。

今回は、以下の内容についてまとめています。

  1. なぜ腰部はデッドリフトや持ち上げ操作に関連する損傷を受けやすいのか
  2. 損傷の機会を減らすため、腰部に加わる力をどのようにして最小限にするべきか

デッドリフトは腰背部の筋トレにおいて諸刃の剣です。

メリットばかりに目を向けず、リスク管理をしっかりできるようにしましょう。

 

 

デッドリフト中の腰部伸展運動の筋力学

デッドリフト中は、体幹後面の伸筋群によって生み出される力は腰部の関節や結合組織(腱や靭帯、筋膜、椎間板)に間接的・直接的にかかると言われています。

以下では筋の役割と腰部構造物へのストレスを軽減させるため、筋により生み出される力についてまとめていきます。

 

 

デッドリフト中の腰部への負荷量の推定

ある研究では、矢状面でL2椎体に加わるおおよその圧迫力を報告している。

仮説例の結果では、200N(約20kg)の重量物を持ち上げた際に、3,232N(330kgいう圧迫力がL2に加わることを示しました。

National Institute of Occupational Safety and Health(NIOSH)が、重量物の持ち上げ操作(リフティング)と取り扱いによって起こる腰部への過剰な負荷から労働者を守る指針を設けています。

NIOSHはL5-S1連結への圧迫力の安全上限を3,400N(347kg)とするように推奨しています。

腰椎の最大負荷許容量が6,400N(653kg)と推定されており、その値はNIOSHにより推奨されている最大安全上限の約2倍に値することになります。

6,400Nの適応年齢は40歳男性とされており、この制限は10歳を増すごとに1,000Nずつ減少するとされています。

(これらの値は一般的な指針であって、全ての人にいつも適応されるわけではありません。)

 

 

 

背筋にかかる負荷の軽減方法

腰椎への圧迫力の大きさを決定する上で筋力が最も影響を及ぼすとされています。

そのため、筋の力の差応対的減少により、腰部構造物への全圧迫力を最も効果的に減少できるとされています。

治療的・教育的プログラムとしては4つの方法を用いられています。

  1. 持ち上げ操作の速度を減らす
  2. 外部負荷の大きさ・重さを減らす
  3. 外的モーメント・アームの長さを減らす
  4. 内的モーメント・アームの長さを増やす

筋トレにより関連性の高い下2つを紹介します。

 

 

外的モーメント・アームの長さを減らす

これは腰部への圧迫応力を減らす最も効果的で実際的な方法であると考えられます。

つまりフォームの修正になるわけですが、

理論上、重量物は両膝の間から持ち上げるべきで、それによって重量物と腰部との距離感を最小限にすることが大切です。

実際のデッドリフトでは膝の間というのは非現実的ですので、なるべきバーが下腿(スネ)に近いほど良いとされます。

逆に同じ重量であっても、より長い外的モーメント・アームで行うと、非常に大きく危険な圧迫力を腰部に生み出す可能性があるため注意が必要です。

 

 

内的モーメント・アームの長さを増やす

腰部伸筋が使える内的モーメント・アームを増やすことが大切になります。

伸展のためにより大きな内的モーメント・アームは、より小さな筋の力で伸展トルクを生み出すことができるとされています。

そのため腰部の前弯増強は、腰部脊柱起立筋が使える内的モーメント・アームを増加させることとなります。

しかし、腰椎の前弯を過度に増強させてしまうこと自体は望ましいことではありません

たとえば過剰な腰部前弯を保ったまま物を持ち上げても、椎間関節や他の脊椎広報用添えの果樹な圧迫力を増加させる可能性があり、良くない結果を生むかもしれません。

 

 

 

腹腔内圧増加の役割

この内容に関しては賛否両論であり、しっかりとした理解が必要だと思われます。

Bartelinkは、大きな重量物を挙上するときに、一般に使われるヴァルサルヴァ法が負荷を軽減し、そのため腰椎が保護される考えを最小に提唱したとされいてます。

ヴァルサルヴァ法は閉じた声門に向けて腹筋を強力に収縮させ、腹腔内圧を随意的に増加させる活動です。

ヴァルサルヴァ法は、横隔膜を上方へ、腹横筋と内腹斜筋を前方へ、腰椎を後方へ、骨盤底筋を下方へ押し、腹部に硬い柱と高圧状態を作り出します。

腹腔内風船”を膨らますようなこの柱作用により、Bartelinkは持ち上げ操作中にヴァルサルヴァ法を行うことで腰椎の伸展トルクを生みだし、それにより腰部伸筋への負担を部分的に減らし、最終的に腰椎への筋による圧迫力をより少なくすると提唱しました。

しかし、いくつかの研究では、その考え方を生体力学的な妥当性を全般的に否定しているものもあります。

ヴァルサルヴァ法腹筋の強力な活動が腰椎の圧迫力を増やしてしまし、腹筋群は体幹と腰椎の強力な屈筋ので、腹筋の強力な収縮は、拮抗筋である伸筋のより強力で平衡する同時収縮性の伸展力を要するとされています。

つまり垂直方向への活動が増加する結果、体幹筋は腰椎全体に筋による圧迫力を増加させることになります。

しかし現実問題たいていの人はヴァルサルヴァ法の恩恵にあづかっているとされています。

腰部病変のない健常者では、腰椎への圧迫力が増加することは腰部安定性の効果的かつ安定源となりうると考えられます。

腹筋の強力な収縮も腰椎骨盤部に重要な固定効果をもたらすとされています。

この効果は、外部負荷の非対称的な持ち上げ操作によって起こる捻りに対抗するのに役立つとされています。

特に腹横筋により発生する力は特に腰椎骨盤部を安定化する効果を有するとされています。

 

 

腹横筋

腹横筋は胸腰筋膜内にかなり強固に付着しているからと考えれらています。

筋活動により発生する力は腰部周囲に外周コルセット効果を生み出すとされています。

また腹横筋は横断方向に主に作用することにより、同時に屈曲トルクを生じさせず、また腰椎垂直方向への圧迫力を増やすことなく腹腔内圧を上昇させることができると考えられています。

内腹斜筋の横走線維は前述の機能と同様に腹横筋の補助筋として作用すると考えれています。

 

 

 

後方靭帯系が伸長されることによって生ずる他動的張力

健常な靭帯や筋膜は、伸長されると、ある程度の自然な弾性を示すとされています。

この性質により、結合組織は開始時に伸長を起こす力のほんの一部を一時期的に蓄えることができます。

持ち上げる準備姿勢である前傾は腰部のいくつかの結合組織を引き伸ばし、これらの組織に発生する他動的な張力が伸展トルクを補助すると考えれます。

後方靭帯系とは、

  • 後縦靭帯
  • 黄色靭帯
  • 椎間関節包
  • 蕀間靭帯
  • 胸腰筋膜後葉

からなります。

十分に伸長された後方靭帯系は、そう伸展トルクの約25%を生み出すとされています。

しかし、この他動的トルク25%の蓄えは腰椎が最大屈曲された後にだけ利用することができるとされています。

実際にはデッドリフトの際に利用されるべき運動ではないことに注意すべきです。

重量挙げの競技選手でさえ、極度の腰椎屈曲は避けるとされています。

腰椎の最大屈曲は避けるべきであり、腰椎はほぼ中間位に保つべきとされています。

このポジションは椎間関節内でのほぼ最大接触面積を確保し、関節ストレスを軽減することに役立つとされています。

さらに腰椎中間位を保持することにより、腰椎の前方滑りに対しても効果的と報告されています。

腰椎中間位は腰部損傷に対する危険性を軽減させることにつながるが、ほとんどの伸展トルクは筋の自動的収縮によって生み出されることになります。

筋肉の中でも特に多裂筋の適度な筋力は腰部にとって不可欠とされています。

これら腰部筋群に適度な筋力がなければ、腰椎は重い荷物によって課される外的トルクによって過度の屈曲を強いられます。

当然デッドリフトをする際に腰部の過剰屈曲を生ずるということは通常、安全なテクニックとは言えません。

 

 

 

胸腰筋膜を介して伝達される筋性張力

胸腰筋膜は腰部で厚く、最も広範囲に発達しています。

組織の大半が腰椎、仙骨、骨盤に付着し、腰部で回転軸より十分後方に位置します。

そのため理論上は、胸腰筋膜が伸長されることで生ずる他動張力は腰部に伸展トルクを生み出すことが考えられます。

胸腰筋膜が有用な張力を生み出すためには、まず伸長されて、緊張した状態である必要があります。

2つの方法が考えられます。

  • 体幹を前傾し腰椎を屈曲することで、筋膜を伸長する
  • 胸腰筋膜に直接付着している筋の自動収縮によって筋膜を伸長する

1つ目に関しては、後方靭帯系と同様に腰部の過剰屈曲自体が、腰椎の不安定性を増強させかつ圧迫ストレスを生む可能性が高いため理想的とは言えません。

そのため、1つ目はあくまで理論上の話であり、実践するにはふさわしくなく、代償動作として捉えるべきでしょう。

2つ目に関して、胸腰筋膜に付着する筋肉を動員することで伸長する方法です。

大きく付着している筋肉として、大臀筋広背筋に絞ってお話しします。

広背筋や大臀筋は胸腰筋膜への強固な付着を介して、間接的に腰部伸展トルクをもたらします。

両方の筋肉ともにデッドリフト時には活動するのですが、その理由は異なるとされています。

広背筋は持ち上げる負荷を腕から体幹へ伝達するのに役立つとされており、胸腰筋膜に付着することに加えて、骨盤や仙骨、脊椎の後面にも付着します。

これらの付着や腰部伸展のための相当なモーメント・アームによって、腰部伸筋としての特質をすべて持っている言えます。

体幹を上行する筋の斜走線維も、特に両側性に活動した場合には、体幹骨格軸に生じるねじれに対する安定性を生み出します。

この安定性は、デッドリフトに限らずワンハンドローなどの非対称な方法でのトレーニングでも、有用であることが考えられます。

大臀筋は股関節を安静させ制御します。

大臀筋が働かなくでは、骨盤を安定させることができず、代償的に腰椎が屈曲してしまうかもしれません。

大臀筋が働くことにより、胸腰筋膜も伸長さえ腰椎は適切な前弯を保つことができます。

 

 

まとめ

安全なデッドリフトを実現するためのテクニックについて、

  1. 腰椎をほぼ前弯中間位に保つ
  2. バーベルはなるべく下腿または膝に近い位置で持ち上げる

という2点です。

1つ目について、

腰椎の最大屈曲位での背部伸筋の強力な収縮は椎間板の損傷を招く可能性があります。

対照的に、腰椎の最大伸展位での背部伸筋の強力な収縮は椎間関節を損傷する可能性があります。

2つ目について、

負荷の外的モーメント・アームは最小にし、腰背部への過剰負荷を避けるべきです。

他にも一般的に考えるべき点として、

  1. 自分の体の限界を知ること
  2. 挙上を行う前にリフティング動作全体のことを考えること
  3. 現実的かつ健康限界内で、適切な身体を保持しておくこと

トレーニングをするにあたって、重量ばかりを追い求めてしまうと、自分の体の限界を超え体が破壊される場合があります

適切な重量適切なフォームでトレーニングを行い、腰に違和感や痛みがあるときはしっかりとした休息をとるか、自分の体を見直すことが大切です。

 

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