どうも、ふじけんです。
今回は内科疾患でも有名な貧血についてです。
貧血という言葉聞いたことある人は多いと思います。
スポーツ貧血はスランプなどとも関連し、知らないばかりに、優秀な選手が陥りやすい疾患です。
スランプや伸び悩みはメンタルと思われがちですが、貧血のような内科疾患が関わっている可能性も非常に高いです。
そんな選手を救ってあげられるように、基礎知識でもいいので勉強しておきましょう。
治療はできなくても、知っているだけで気づくことはできるはずです。
専門医師にバトンを繋げられるようになりましょう。
目次
スポーツ貧血
ヘモグロビン(Hb)と貧血
ヘモグロビンは赤血球の中にあります。
全身に酸素を運ぶヘモグロビンは、鉄を含む色素「ヘム」と「グロビン」というたんぱく質からなります。
貧血とは、ヘモグロビンや赤血球の減少のことをいいます。
スポーツ貧血とは
スポーツ貧血とは、運動・スポーツが原因で生じる貧血のことを指します。
スポーツ内科的問題で最も多い疾患とされています。
主に「鉄欠乏」が原因です。
年代・競技・レベルにもよりますが、有病率は少なくとも約10%以上とされています。
国体選手の貧血有病率では、約20%とされています。
アスリートの4〜6人に1人はもっているとされている。
症状としては、息切れや動悸、易疲労性、倦怠感、氷食症などがあります。
筋肉への酸素運搬能力が低下し、パフォーマンスの低下(特に持久力の低下)を引き起こすとされています。
そして、スランプや伸び悩みの原因となりうるとされています。
スポーツ貧血の原因
スポーツ貧血の原因として、鉄欠乏とエネルギー不足が大半を締めます。そのほかに溶血などがあります。
細かく分けると以下のようになります。
- 鉄需要の増加
- 鉄摂取の不足、吸収低下
- 鉄喪失増加
- 溶血
- その他
鉄需要の増加に関連するもの
スポーツや成長期を通して、成長や筋肉量の増大、運動強度や量の増加により、鉄需要が増加します。
小学校高学年から中学生・高校生の時期は成長が進みます。
さらにスポーツ活動も盛んになる時期が重なります。
それにより、身体の成長に伴い、血液量が増加し、筋肉量の増大に伴い、筋肉内のミオグロビンの産生量が増加します。
ミオグロビンとは、筋肉の中にある鉄を含んだタンパク質であり、ヘモグロビンから酸素を受け取り筋肉に貯蔵します。
鉄が減少すれば当然ミオグロビンも減少します。
ミオグロビンが増えるということはそれだけ鉄が必要になるということです。
そのため鉄欠乏を引き起こします。
鉄摂取不足、吸収低下に関連するもの
相対的な栄養不足(主に鉄やタンパク質の不足)により、ヘモグロビンや鉄そのものが減少してしまいます。
練習量の多い競技ほどエネルギーや鉄の需要が高いため、それだけ相対的に栄養も摂取する必要があります。
一番リスクが高いものとして、減量があります。
審美系・体重別競技などの減量が必要な競技では、時に不適切な食事制限が行われます。
運動強度は保ちつつ、食事制限をすることによって相対的な栄養不足が起こり得るため注意が必要です。
その他にも摂食障害やストレス、胃腸障害による食欲低下にも注意が必要です。
ヘプシジンや一過性腸管虚血、ストレスなどにより、消化管での鉄吸収低下により貧血を引き起こします。
ヘプシジンとは、運動後3〜6時間で増加し、鉄吸収を抑制するといわれている。
運動中は筋肉への血流が優先されるため、腸の栄養血管への血流が制限されるといわれています。(虚血)
一過性の腸管虚血により、鉄吸収の低下や粘膜出血が起こり、鉄欠乏を起こします。
鉄喪失増加に関連するもの
月経により失血したり(女性アスリート)、汗からの喪失、消化管出血(ストレスや腸管への衝撃により)、血尿、接触プレーによる皮下出血なども関連します。
汗からの喪失として、汗には鉄が極少量含まれるとされています。(300〜400μg /汗1L)
しかし、連日炎天下での多くの発汗を伴うトレーニングを行う場合は決して無視できませんので、注意が必要です。
溶血に関連するもの
溶血とは、赤血球が寿命を迎える前に何らかの原因で破壊されることをいいます。
足底部への繰り返す衝撃により赤血球が破砕するといわれており、陸上長距離・バレーボール・剣道など関連性が高いとされています。
運動による高体温は赤血球膜を脆弱化させ、老化赤血球が溶血しやすくなるといわれています。
アスリートにとってある程度の溶血は避けられないとされていますが、度を超えた溶血を認める場合には足底部の衝撃を緩和するよう勧めることがあります。
他に筋肉の強い収縮により血管内溶血がおこるともされている。
その他
相対的なエネルギー摂取量不足や希釈性貧血、慢性疲労、ストレスによる骨髄機能低下なども関連すると報告されています。
スポーツ貧血の診断
診断にはヘモグロビン(Hb)とフェチリン(貯蔵鉄)を血液検査にて評価します。
まず前提として、現時点でスポーツ貧血に対する正確なガイドラインはありません。
一般的な貧血の診断基準としては、
- 男性:ヘモグロビン(Hb)→ 13.0g/dl未満 フェチリン → 12ng/ml未満
- 女性:ヘモグロビン(Hb)→ 12.0g/dl未満 フェチリン → 12ng/ml未満
とされています。
高い運動負荷がかかるアスリートでは、一般人の鉄欠乏性貧血の診断基準では不足と考えられています。
アスリートの診断基準としては、(例として)
- 男性:ヘモグロビン(Hb)→ 14.0g/dl未満 フェチリン → 30ng/ml未満
- 女性:ヘモグロビン(Hb)→ 12.5g/dl未満 フェチリン → 20ng/ml未満
とされています。(注意:ガイドラインではありません)
アスリートにおいて運動強度を考慮すると、スポーツ貧血の主要因は「鉄欠乏」ではありますが、実際には「エネルギー不足」による貧血も少なくないといわれています。
そのため、従来のヘモグロビンとフェチリンを中心とした診断では全てのスポーツ貧血を扱いきれないと考えられています。
血液検査による栄養状態の推定やスポーツ栄養士との連携が必要
スポーツ貧血の治療
第一選択は、スポーツ栄養士による栄養指導になります。
その次に鉄剤の内服になります。(特にフェチリン10ng/ml未満の場合)
鉄過剰性の問題を考え、原則は鉄剤注射はしないとされています。
スポーツ貧血に対する栄養指導
食事療法はスポーツ貧血の予防にも治療にも重要とされています。
基本は鉄、ビタミンC、タンパク質をしっかり摂ることが大切になります。
鉄、ビタミンC、タンパク質はセットで摂ることが大切!
アスリートでは鉄は15〜18mg/日必要といわれています。
食事からの鉄吸収率は平均すると約10%いわれていますが、動物性食品と植物性食品とで大きく異なります。
動物性食品に含まれている鉄のほとんどがヘム鉄といわれており、吸収率は20〜30%と比較的良いとされています。
一方植物性食品に含まれる鉄は非ヘム鉄が多く、吸収率は3〜5%と悪いです。
スポーツ貧血と鉄過剰
フェチリン150mg/ml以上は鉄過剰とされています。
過剰な鉄は心臓や肝臓、神経などに沈着し機能障害を起こす可能性があるとされています。
スポーツ貧血治療中は定期的な血液検査により、鉄剤の量の調整が必要です。
まとめ
スポーツ貧血は特にアスリートにおいて有病率が高く、パフォーマンスの低下やスランプ、伸び悩みなどの原因となりえます。
早期発見し、適切な検査・治療を行うことで、原因を解決することは可能です。
しかし、スポーツ貧血に関して適切な情報が十分浸透しているとは言い難いのが現状です。
また心肺機能や身体能力が高いことにより、多少の貧血があっても症状が隠されているケースも稀ではありません。
そんな時に現場スタッフとして、選手の状態に気づいてあげられるようにしたいものです。
私は医師ではありません。栄養士でもありません。
貧血は治せませんが、選手の側にいることで症状に気付き、疑うことはできるかもれません。
医療もチームです。
現場で側にいるメディカルスタッフやトレーナー、監督、コーチ、選手、家族が気づくことで、医師にバトンを渡せると私は思います。
知識だけでも頭の片隅に入れておきましょう。
それがチームの力になると私は信じています。