どうも、ふじけんです。
運動中の呼吸の仕方については多くの議論があると思います。
今回は特にスクワットを例に考えていきたいと思います。
それぞれの目的と特徴を踏まえて皆さんも一緒に考えてみてください。
呼吸を意識する目的
呼吸を意識する目的はどんなことが挙げられるでしょうか?
胸腔内や腹腔内圧を高め脊柱を安定させることや、
血圧が上昇し血管に負担をかけないようにさせること、
より重いウエイトをあげることなどが
挙げられるのではないでしょうか?
1つずつ紐解いてみましょう。
脊柱を安定させる
脊柱を安定させることで、脊柱の整形外科的トラブルは減少すると考えられます。
脊柱を安定させるのには、呼吸が関係していそうなイメージは誰でも容易に考えられると思います。
脊柱を安定させるためには、胸腔・腹腔内圧を高めることが大切になりますが、この方法で一番手っ取り早いのが「バルサルバ法」になります。
バルサルバ法とは
バルサルバ法とは、腹部と胸部の筋群から圧がかかる中、声門を閉じて息を止めることの正式名称になります。
息を吸い込むと、横隔膜が収縮して胸腔の容積が増します。
大きくなった肺に空気が入り、外惻と内側の圧力が均等になります。
息をぐっと止め、体幹の筋群が引き締められると、圧力勾配といって内側と外側に圧力の差が生まれます。
体を強く引き締めるほど、この圧力は高くなります。
胸腔と腹腔をへだてるものは横隔膜しかないので、腹部の圧力も高まります。
脊柱の椎骨は背中の筋肉によって構造上適切な位置に維持されています。
腹腔の内容物は基本的に圧縮されないものであり、ここを通して脊柱に制圧力が伝わり、椎骨の位置関係をさらに安定化させます。
つまり、腹腔と胸腔の圧力は横からと前から脊柱に伝えられ、さらに脊柱起立筋が後ろから圧力を生み出しているということです。
大きく吸い込んだ息を止めると胸腔の圧力が高まり、この圧力は腹直筋と腹斜筋が引き締まることでさらに高まります。
こうして脊柱は硬いシリンダーに包まれるような形で支えられるのです。
リフティングベルトはこの効果を高める働きをします。
胸腔内で肺の圧力が高まり、腹筋群の収縮により腹腔内の圧力が高まり、脊柱起立筋の収縮は安定性を生みます。
そして、これらが相乗的に働きます。
バルサルバ法を使うことで、この圧力と安定性を生む能力が増します。
高重量をあげるときに息を吐くと、脊柱を安定させるのに十分な圧力を生み出せなくなります。
高重量を扱うときには、大きく息を止めることが脊柱を安定させる上で大切になります。
血圧の上昇
運動中によく「息を止めるな」と指導される方は多いのではないでしょうか?
これは世間一般的には、胸腔と腹腔の圧力は体感による心臓や血管にも及び、この圧力が高まるとそれは血管と通して脳に伝わると考えられています。
また呼吸を止めることで、酸欠状態になり、それを防ぐために心拍数が上昇し血圧が上昇することも考えられます。
そして、この高まった圧力が、脳出血といった脳血管障害の原因になるリスクがあると言われています。
そのため運動中は呼吸を止めずに、特に筋肉を収縮させるときには息を吐くことを指導する方が多いです。
この場合スクワットで考えると、しゃがむときに息を吸い、プッシュアップするときに息を吐くことになります。
特に循環器や呼吸器、脳血管に何かしらの問題を抱えている方や、高齢者は特に注意が必要かもしれません。
より重い重量を扱うために
高重量を扱う場合は上記で示した「バルサルバ法」を用いることが適切かと考えられます。
面白い例があったので紹介します。
自動車の運転中、交差点の真ん中でガス欠を起こしたところを想像してください。
自動車を押して交差点から出るか、事故で命を落とすかの選択をせまれたとします。
自動車のドアを開け、ドアのフレームに肩をつけ、大きく息を吸い込んで自動車を押し出すでしょう。
自分と自動車が交差点から出るまでの間、途中で素早く息継ぎをする以外は息を吐くことはしないでしょう。
さらに、このとき呼吸の仕方について考えることさえないでしょう。
これは過去何百万年という歴史の中で、我々の祖先は重たいものを押し続けてきて、押すときには呼吸をどうすればいいかを中枢神経系に覚えこませてきたからです。
さらに、強く押す最中に自然と唸り声が出る人もいるでしょう。
これは、正門で気道が大きく狭められた状態で声が出るものです。
気道が狭くなって、少しずつ息を吐いている状態でも圧力は上がります。
このように本能的に考えても、パワーを一点に集中する際は、息を堪え力を入れるのは自然と言えるかもしれません。
結局「息は止める?」「息は吐く?」
そもそも脳血管障害を伴うリスクはどれほどあるのでしょうか?
2004年の脳血管障害での死亡率は、0.000512というデータが出ています。これはアメリカのデータです。
致命的でない脳血管障害の発生率は0.00305でした。
それに対してあらゆるスポーツ中・高生を対象として研究では、7日以上トレーニングができなくなる傷害があったのは、全てのアスリートのうち7.6%でした。
1年を通してあらゆる原因での傷害の発生率は0.082でした。
つまり、運動を行なっている特定の人を対象として整形外科関連の傷害の発生率と、アメリカ全人口を対象として致命傷でない脳血管障害の発生率を比べても、整形外科関連の傷害の発生率は27倍にもなります。
明らかに整形外科的傷害のリスクの方が高いことがわかりますね。
ただ全くリスクがないわけではないのは当たり前です。
しかし息を吐くことを意識しすぎると整形外科関連の傷害リスクは高くなるかもしれませんね。
最も重要なのは、トレーニングの積み重ねなしにいきなり100㎏以上の重量を担いでスクワットをする人は誰もいないということです。
筋肉だけでなく、体内の他の組織や神経系、循環器系もトレーニングを行うことで適応しようとします。
実際には重量に関係なく、同じ呼吸法をする癖をつけることが大切であり、そう考えると自然とバルサルバ法になってしまうのではと感じてしまいます。
バルサルバ法によって起こる問題以上に、防ぐことだできる問題の方がはるかに多いのかもしれません。
まとめ
呼吸法において様々な議論が挙げられているため、ここでは特徴を捉えて上で私の意見を少し述べてみました。
絶対ということはありませんし、それぞれの目的に応じてやり方は変わってくると思います。
個人因子も大きく影響してくることかと思いますので、そこはご自身の身体と目的を明確にした上でトレーニングに取り組むようにしましょう。