どうも、ふじけんです。
私の勤めている病院では盛んにヘルニア患者さんの手術を行っており、術前術後リハビリに関わらせていただく機会が多くあります。
私がそういったヘルニア患者さんに対して理学療法を提供する上で大切にしていることがあります。
それは「なぜヘルニアになってしまったのか?」を考えることです。
そこで患者さんに自分の身体とヘルニアという病態について理解していただくようにしています。
この記事を通してセラピストだけでなく、ヘルニアによる腰痛をお持ちの方の予防・改善につながると幸いです。
それではいってみましょう。
目次
腰椎椎間板ヘルニアとは
椎間板ヘルニアは、脱出した椎間板組織が神経根や硬膜を圧迫して「腰痛」や「下肢痛」を引き起こす病態です。
加齢による椎間板の変性が要因となりやすいのですが、重量物を持ち上げたりスポーツなどによる腰部への負荷が発症原因となることも多いです。
症状としては、腰痛と下肢痛、他に筋力低下や感覚障害、腱反射異常などをきたします。
確定診断はMRI検査で行われます。
治療法の第一選択は保存療法になりますが、進行性の麻痺や膀胱直腸障害、日常生活に支障がでるほどの強い痛いみが長く続く場合などは手術が検討されます。
下肢麻痺や膀胱直腸障害は一定期間以上放置しておくと、たとえ手術でヘルニアを除去しても症状が残存する可能性があるといわれています。
何より大切なのは治療方法に問わず、症状軽快後もヘルニア再発予防をするために日常生活の見直しや体幹のトレーニング、下肢のストレッチなどが大切になります。
椎間板ヘルニアの病態(線維輪と髄核)
椎間板は線維輪と髄核からなり、椎体同士をつなぐクッションの役目をしています。
髄核は水分の豊富なゲル状の組織で、軟骨細胞を多く含みます。
線維輪は髄核を包み込むように存在しています。
椎間板が加齢などにより変性し、スポーツ活動や悪い姿勢での動作などがきっかけで椎間板内圧が上昇し、変性した髄核が神経側へ脱出して椎間板ヘルニアが発生するといわれています。
わかりやすく説明すると、あんぱんを想像してください。
パンが線維輪であんこが髄核になります。
あんぱんを上からや下から押すと、中のあんこは飛び出てきますよね。
パンやあんこは日を置くことに劣化しますし、ストレスをかけ続けることでより早く劣化します。
劣化したパンの方があんこが飛び出しやすいわけですね。
これが椎間板でも同じことが起こっていると思っていいでしょう。
このあんこ(髄核)が神経を圧迫することにより、その神経領域の下肢痛や神経症状(痺れや感覚障害)が出現することになります。
受傷機転
椎間板への圧迫ストレスによる椎間板内圧の上昇がヘルニアの発生要因と考えます。
そのためスポーツ動作や悪い姿勢での日常生活動作において椎間板へのストレスにより発生します。
椎間板は腰椎が繰り返し屈曲させたり、慢性的に屈曲させたりすことでストレスを受けやすいです。
屈曲により髄核は後方に押しやられ、内圧が上昇することになります。
また腰椎の屈曲にねじり運動(側屈や回旋)が加わると、さらに後方あるいは後外側方向へ椎間板が脱出しやすくなります。
姿勢ごとによる椎間板へ加わる負荷についてですが、立位を100とすると、仰向けに寝た場合は25、座位では140、中腰では150といわれています。
このことから慢性的な屈曲姿勢(座位や前屈姿勢)を行うであろう、日常生活の姿勢やトレーニング動作の姿勢についても十分注意する必要があると考えられます。
動作において、日常生活では前屈位で重量物を持ち上げるような動作などになります。
また長距離歩行により腰椎が回旋・側屈を繰り返すことにより腰痛が出現する人も注意が必要です。
スポーツ動作では過度な回旋ストレスや前屈の反復動作などが考えられます。
また時間帯にも影響されます。
髄核は比較的多量の水分を保持できるために、上記姿勢ごとの椎間板への負荷で低い臥位姿勢などでは髄核は水分を多量に取り込み大きくなります。
朝起きたすぐは身長が高いことを経験した人や聞いたことがある人は多いんじゃないでしょうか?
これは長時間の臥床により髄核に水分が蓄えられ身長が少し高くなることが考えられます。
髄核が膨張することにより椎間板はより不安定な状況にさらされることになります。
実際に椎間板ヘルニアを経験する確率は、午前中に多い傾向があり、午前中は1日の中で髄核の含水量が最も多い時間帯であるというデータも出ています。
午前中こそより前屈動作や長時間の座位姿勢には注意したいですね。
予防
1番の予防としては腰椎の屈曲+側屈+回旋をさせないことになります。
腰椎が過剰に動いてしまうことに問題があるのですが、これには色々な要因が考えられますが1つ大きなポイントがあるのでそちらを解説していきたいと思います。
そのポイントが腰椎骨盤リズムになります。
腰椎骨盤リズム
腰部脊柱は股関節とともに、身体全体の屈曲・伸展の回転軸となります。
この点については体幹の前屈や後屈、急な坂を登るとき、あるいはものを地面から持ち上がるなどの活動の事を考えてみましょう。
そのような矢状面での運動の際の腰椎と股関節との運動学的関係を「腰椎骨盤リズム」といいます。
立位にて前屈する際に、たとえば股関節の伸展筋群(ハムストリングスなど)の伸長制限があると、股関節の屈曲が制限されることが考えられます。
これにより体幹をより前屈させると腰椎及び下位胸椎の屈曲を大きくする必要があります。
屈曲が過剰になると、やがて、この領域の脊柱後方の結合組織が過伸長し、弱くなり、それにより、これらの組織がさらなる屈曲に対して抵抗する能力が低下する悪循環になります。
このような動作を繰り返していると次第に腰椎が柔軟になり、慢性化することで椎間板に対する応力が大きくなります。
さらにより腰椎が屈曲しやすくなる悪循環に陥ります。
これが最大の腰椎椎間板ヘルニアの原因と私は考えています。
腰椎骨盤リズムを念頭においていかに腰椎にストレスをかけないことを考えると前屈動作などにおいては、腰椎以上に股関節を屈曲させることが大切になります。
鏡を使って前屈動作を確認してみましょう。
腰椎が山なりに屈曲している人、骨盤が水平になるまで股関節を屈曲できない人は要注意です。
骨盤から前屈するように修正することが予防方法になります。
もし股関節伸展筋群が硬すぎて骨盤が前傾することができない人は、ハムストリングスや臀筋群のストレッチが必要となります。
ただストレッチにて可動域を改善しても腰椎から動き出す前屈をしてしまっては、慢性的な腰椎骨盤リズムは改善できないので骨盤から前屈する方法を練習することが大切になります。
長時間の座位姿勢は避けよう
もう1つ注意すべきは長時間の座位姿勢になります。
上記でも説明した通り、椎間板に負荷がかかる姿勢において座位姿勢は前屈姿勢に次ぐ負荷がかかります。
この情報だけでも小まめに座位姿勢をやめるだけでも対策と言えるでしょう。
しかし座位姿勢の中でもより負担のかかる姿勢があります。
上記の腰椎骨盤リズムが少し関連しています。
長時間の座位姿勢による腰痛の問題についてこちらの記事を参考にしてみてください↓↓
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長時間の座位姿勢をやめることと、大きく伸びをして椎間板への圧縮ストレスを取ってあげることが大切になります。
まとめ
腰椎椎間板ヘルニアについて発生原因から予防についてまとめてみました。
長時間のデスクワークや運転、荷物を持つための前屈姿勢などこのような動作においてヘルニアを発生させてしまうリスクがあります。
問題は腰椎の屈曲であり、予防方法は股関節(骨盤)から動かす腰椎骨盤リズムを獲得することになります。
日常生活で少し注意することが、加齢に伴う椎間板の変性を止めるきっかけになるでしょう。
またヘルニアに限らず、慢性腰痛にも同じことが言える部分も多くあるので、是非みなさん自分の日常生活と身体を理解し適切な腰椎骨盤リズムを獲得してください。